和歌山県東牟婁郡串本町の橋杭岩の対岸、紀伊大島の東端部分の断崖の上に立っているのが樫野埼灯台です。江戸幕府が1866年6月25日に開国に先立ってイギリス、フランス、オランダ、アメリカの4カ国と締結した江戸条約で建設することを決められた灯台のうちの一つがこの樫野崎灯台で、イギリス人で日本の灯台の父とも呼ばれているリチャード・ヘンリー・ブラントンが日本で最初に設計を手がけた石造りの洋式灯台です。着工は1869年(明治2年)3月、完成は翌1890年の8月になりますがその完成の1ヶ月前の7月8日には灯台にすでに点灯されて灯台業務が開始されたという慌ただしい歴史を持っています。日本最初の回転式閃光灯台でもあり、その建物が現存していることでも大変貴重なものとなっています。当時貿易に関して日本の灯台整備が急務となっており、諸外国が日本の複雑に入り組んだ海岸線に対して早急に灯台建設を要望していたことが灯台建設の背景にあります。また紀伊大島は海上交通の要衝としてかなり重要度が高かったということも合わせて意味するかと思います。
断崖絶壁に立つ白亜の灯台は非常に美しい姿を見せてくれます。