京都の北の山間に位置する鞍馬寺は
京都市左京区鞍馬本町にある寺院で、元々は天台宗の寺院だったものが1947年に鞍馬弘教という独立した宗派を
新たに立てて総本山となり、天台宗から独立した寺院です。鞍馬寺の鞍馬弘教とは千手観音、毘沙門天、魔王尊
の三尊を尊天と奉って崇拝する密教です。開基は鑑真の弟子の鑑禎(がんてい)という僧侶が奈良時代後期の770年に
この場所に草庵を作ってそこに毘沙門天を祀ったことが鞍馬寺のはじまりとされているようです。
鞍馬寺の名前の由来はこの寺の位置する山号でもある鞍馬山から来ているそうですが、
開基の鑑禎が見た夢の中のお告げによると京都の北の方に霊山があり、訪ねてゆくと
鞍馬山の上の方に宝の鞍を乗せた馬の姿を見たという言い伝えがあり、ここからも
鞍馬寺の名前の由来となりそうな起源を見ることが出来そうです。
また鞍馬といえば義経の幼少期の牛若丸に武術を授けたとされる鞍馬天狗が有名ですが、
もともと鞍馬天狗は鞍馬寺の大僧正をそう呼んだもので、天狗というものは今でいう鼻が高く伸びた
妖怪のようなものではなく、当時の修験道の修行僧や山伏等をそう呼んだのが始まりのようです。
ちなみに牛若丸に武術を授けたとされるのが鬼一法眼(きいちほうげん)と呼ばれる武装した陰陽師集団のドンで、
武術に非常に長けており、鞍馬寺においても修行僧にも武術を指導したとされているようです。
この鬼一法眼を祀っている御堂も鞍馬寺の境内に残されています。
鞍馬寺は当時山岳信仰の対象となっており、このような修行僧が多数いたものと思われます。
また鞍馬天狗に由来する姿は、尊天の一つでもある魔王尊の姿を天狗に見立ててそう呼んでいるのが
始まりとも言われているようです。
鞍馬山はかなりの急傾斜を持っているため、九十九折の坂と呼ばれる坂道を下から登ってゆくとかなりの急勾配となります。
ちなみに手元のGPS計で測ってみたところ、下の門の前の標高が232m、鞍馬ケーブルを登り切った多宝塔
の位置で352m(実際の標高は364m)鞍馬寺本堂の金堂前が398m(実際の標高は410m)となっており、
下の門の前からは約166mの登りとなっています。
また谷を隔てて西隣にある貴船神社側にも参道が別にあり、貴船側からはつづら折れの急な山道で
鞍馬寺本堂前へと行ける参道が作られています。
この辺りの山道を歩くと、修験道で修行に使われていたとされる鞍馬寺の厳しい修行風景を少しだけ
垣間見られるような気もします。
鞍馬寺では参拝者のために、急な坂道を登らなくてもいいように、
山門駅となる普明殿から入って片道寄付金名目で100円を払えば(運賃は無料)ケーブルカーに
乗ってほぼ山頂近くの多宝塔まで行けるように配慮されています。
ただし本堂まではまだかなり登りの参道と石段が続きます。
ちなみにこのケーブルカー、日本で唯一宗教法人自身の運営しているケーブルカーでもあり、
また同時に日本でも最も短い鉄道でもあります。山門駅と多宝塔駅間の路線の長さはたったの207mしかありませんが、
この207mで標高差96mを約2分間で登り切りますので、かなりの急勾配だというのが分かると思います。
鞍馬寺の紅葉の見ごろ時期は11月20日前後と思われますが、標高が高いことと京都の北の山間部に位置することから、
京都市内よりも見頃時期は早いと思われます。
ただ紅葉の見どころは限られおり、本堂前の広場から山を背景に紅葉した木々が見られる程度で、
ここが一番の紅葉スポットだと思います。後は参道にもありますが、かなり上まで登らないと
視界が開けないことと、紅葉のもみじは比較的本数も少なめですので、紅葉を当てにしてゆくと
ちょっとガッカリさせられるかもしれません。でも本堂前からの眺望はお天気さえ良ければなかなかのものです。
今回の撮影でもほとんど金堂前の広場からの撮影に終始してしまいました。
ここからさらに奥へ行くと鞍馬寺霊宝殿や牛若丸の息継ぎの水、遮那王堂を経て魔王殿に向かう木の根道や
奥の院・魔王殿があるのですが、夕暮れの時間帯で今回はパスしました。
鞍馬寺には駐車場はありませんが、民間有料駐車場が入り口にいくつかあり、相場は一日500円です。
鞍馬寺の入場料は200円、ケーブルカー使用時のみ寄付金100円かかります。
(寄付金として徴収して名目上運賃無料にするのは課税を避けるためだそう)